被災前の取り組み
- 寺山炭窯跡では、世界文化遺産登録の前後から炭窯の石積が前にせり出す「はらみ出し」が課題となっていました。
- 世界遺産登録後の2017年にユネスコ(国際連合教育科学文化機関)世界遺産センターに提出した「寺山炭窯跡の保全措置の計画及び実施計画」では、炭窯の石積を良好な状態に維持するための計画も記載し、計画に基づいた各種調査を実施していました。
石積の変位測定(2015~2019年)
- 石積の「はらみ出し」の想定される範囲に、124個の観測点を設け、測量機器を用いて定期的に変位量(どの程度位置が変わるのか)の測定を行いました。
- その結果、2015年11月~2017年12月の期間で約10パーセントの観測点において10ミリを超える変位量が測定され、「はらみ出し」の進行がうかがえました。
- これにより解体・積み直しも視野に入れた修復を検討するための調査を行うことになりました。
炭窯に設置した観測点(白い点に見えるものが観測点)
3次元測量、調査票作成、変状要因分析(2017・2018年)
- 修復に向けた基礎資料の収集を目的として3次元測量や石積の観察記録をまとめた調査票作成を行いました。また、これまでの調査成果も踏まえ、石積の「はらみ出し」の要因を分析しました。
- その結果、炭窯の外周を囲う石積の裏側の土(盛土)に雨水が流入することで劣化・流出を促進したこと、石積を構成する石材の劣化や損傷が石積に変形を生じさせたことなどが、主な要因と想定されました。
3次元測量の様子
発掘調査(2017~2019年)
- 炭窯の全形や基礎の構造を把握するため、炭窯の外周部分の発掘調査を実施しました。
- その結果、炭窯の北東(右)側にも石積が巡り、炭窯前面の地下には平面の形状が四角形の基壇(きだん)状の石積が残っていることを新たに確認しました。
発掘調査で確認した基壇状の石積
発掘調査成果を統合した3Dモデル
植生調査(2018年)
- このほか、炭窯で作られた木炭の原料となるシイ・カシの二次林などの分布状況を把握するため、炭窯周辺の植生調査も実施しました。
植生調査の状況