植生回復の取り組み―世界遺産寺山の森再生プロジェクト―
被災後に芽を出したどんぐり(アラカシ)(2021年9月15日)
- 2019年に発生した土砂崩れでは、炭窯の周辺にあった多くの樹木も失われてしまいました。
- 「世界遺産寺山の森再生プロジェクト」は、土砂崩れによって被災した「どんぐりの森」を、環境や地域生態系に配慮した方法で再生させることで、貴重な文化財や自然景観を次の世代に引き継いでいくことの大切さを学ぶとともに、災害を通して地球温暖化や防災に対する意識啓発を図るなど、持続可能な開発目標(SDGs)の推進に資する取り組みです。
- 主な取り組みとしては、地域の方々と一体となって2021年の秋に採取したどんぐりなどを数年かけて育て、2025年に植樹するものなどがあります。(プロジェクトの概要(PDF:996KB))
- 本格的な取り組みは2021年の秋から始まりましたが、ここでは先行した取り組みも含めてご紹介します。
2020年度
花尾小学校児童のどんぐり採集とふるさと考古歴史館での育苗活動
- 寺山炭窯跡の植生回復の取り組みに賛同いただいた花尾小学校1、2年生の児童のみなさんに、鹿児島市内で唯一イチイガシの自然林が残る花尾神社でイチイガシのどんぐりを採集していただきました。
- 採集したどんぐりは「鹿児島市立ふるさと考古歴史館」で大切に育てています。
どんぐり(イチイガシ)種まきの状況(2021年2月13日)
どんぐり苗の生育状況(2021年9月11日)
少年自然の家勉強会
- 寺山炭窯跡の近くにある「鹿児島市立少年自然の家」では、寺山とよく似た自然環境を活かしてどんぐり採集や育苗活動を行う予定です。
- 2021年秋からの本格的な取り組みに向け、植物学者の寺田仁志先生を講師に屋外勉強会を始めました。
勉強会の様子(2021年2月4日)
勉強会の様子(2021年4月22日)
2021年度
「みどりの少年団」による育苗活動
- 「桜島どんぐりころころ植樹祭実行委員会」からマテバシイやアラカシなどの苗を提供していただきました。
- この苗は、寺山炭窯跡近くの吉野公園で採集されたどんぐりを育てたもので、鹿児島市内の「みどりの少年団」のみなさんの手により大切に育てられていたものです。
- 提供いただいた苗については、引き続き各学校で育てていただきながら、当初の計画を一部前倒しして寺山炭窯跡周辺の斜面に植樹することを検討しています。
- 協力いただいている中学校:緑丘中学校、清水中学校、長田中学校、武中学校、西紫原中学校、伊敷台中学校、玉龍中学校、吉野東中学校
どんぐりの生育状況(緑丘中学校)
地元町内会の取り組み
- 植生回復の取り組みに参画いただく吉野町の東菖蒲谷(ひがししょうぶだに)町内会のみなさんが「鹿児島市立少年自然の家」で勉強会を開催しました。
- 7月25日は、小・中学生を対象に開催し、本市職員による寺山炭窯跡の災害復旧事業と植生回復についての説明後、屋外での植物観察会が行われました。
- 10月31日は、女子部の皆さんによる勉強会が行われ、たくさんの児童も参加しました。7月と同様に本市職員による説明後、植物学者の寺田仁志先生を講師に迎え、屋外での植物勉強会が行われました。勉強会にあわせてどんぐり(マテバシイ)拾いも行われました。
- 11月24日は、しょうぶ会(敬老会)を対象に開催し、本市職員による説明後、寺田先生の解説による屋外植物勉強会が行われました。また、勉強会後は10月31日に採取したどんぐり(マテバシイ)の種まきが行われました。
勉強会の様子(7月25日)
屋外植物観察会の様子(7月25日)
屋外植物勉強会の様子(10月31日)
どんぐり拾いの様子(10月31日)
屋外植物勉強会の様子(11月24日)
「世界遺産寺山の森再生プロジェクトinJTの森」を開催
- 日時:2021年10月3日9時00分~12時00分
- 場所:白銀坂、JTの森重富
- 参加者数:20名
- 内容:地質学者の大木公彦先生、植物学者の寺田仁志先生、姶良市と本市の文化財担当職員の解説を聞きながら、江戸時代の主要街道である白銀坂やJTの森重富を散策し、ジオパークの魅力を満喫するとともに、災害復旧中の寺山炭窯跡周辺の森の再生に使うどんぐりを拾いました。
大木公彦先生による解説の様子
姶良市職員による解説の様子
寺田仁志先生による解説の様子
どんぐり拾いの様子
吉野東小学校の取り組み
- 吉野東小学校は、寺山炭窯跡に最も近い小学校です。
- 11月18日、1年生の児童194人にどんぐりの種まき(マテバシイ約1,030個)を行っていただきました。種まきの前には、出前授業として本市職員が寺山炭窯跡の紹介や種まきの方法などの説明を行いました。種まきには、児童のみなさんが少年自然の家で拾ったどんぐりを使いました。
- どんぐりの苗を育てて2025年に寺山炭窯跡の斜面地に植樹することを目指しています。
どんぐり拾いの様子
出前授業の様子
種まきの様子
川上小学校の取り組み
- 川上小学校の近くには、寺山炭窯跡と同じく、世界遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産となっている「関吉の疎水溝」が所在します。
- 12月9日、1年生の児童102人にどんぐりの種まき(マテバシイ約560個)を行っていただきました。種まきの前には、出前授業として本市職員が寺山炭窯跡の紹介や種まきの方法などの説明を行いました。種まきには、児童のみなさんが小学校周辺で拾ったどんぐりを使いました。
- どんぐりの苗を育てて2025年に寺山炭窯跡の斜面地に植樹することを目指しています。
出前授業の様子
種まきの様子
大明丘小学校の取り組み
- 「関吉の疎水溝」は、下田町の取水口から磯の仙厳園の直上にある「落し」まで約7キロあります。大明丘小学校は現在確認できる疎水溝の流路の終点近くにあります。
- 1月13日、1、2年生の児童126人にどんぐりの種まき(アラカシ約600個)を行っていただきました。種まきの前には、出前授業として本市職員が寺山炭窯跡の紹介や種まきの方法などの説明を行いました。種まきには、校長先生が採集したどんぐりを使いました。
- どんぐりの苗を育てて2025年に寺山炭窯跡の斜面地に植樹することを目指しています。
出前授業の様子
種まきの様子
吉野小学校の取り組み
- 吉野小学校は、薩摩藩の薬用植物園「吉野薬園」の跡地にあります。この薬園は、集成館事業を推し進めた島津斉彬にも引き継がれたといわれています。
- 1月28日、1年生の児童185人にどんぐりの種まき(マテバシイ約1,000個)を行っていただきました。種まきの前には、出前授業として本市職員が寺山炭窯跡の紹介や種まきの方法などの説明を行いました。種まきには、児童のみなさんが吉野中学校で拾ったどんぐりを使いました。
- どんぐりの苗を育てて2025年に寺山炭窯跡の斜面地に植樹することを目指しています。
出前授業の様子
種まきの様子
2022年度
どんぐりの森づくり体験
- 5月28日に、午前・午後の2部制で開催しました。午前75名、午後81名の計156名の方にご参加いただき、斜面地の一部(約900平方メートル)に延べ826本のどんぐりの苗を植樹しました。
- 当日は、吉野東中学校の生徒による寺山炭窯跡周辺に関する説明や、本市職員による寺山炭窯跡の災害復旧事業の進捗などについて説明を行い、植物学者の寺田仁志先生指導による、森づくり体験が行われました。
どんぐりの森体験当日配布資料(PDF:1,290KB)
吉野東中学校生徒による、寺山周辺の説明
寺田仁志先生による、どんぐり植樹の説明風景
植樹風景(遠景)
植樹風景(近景)
どんぐりの鉢上げ体験
- 前年度に種まきをしたどんぐりの中で、芽が出てきて成長した苗をポリポットに植え替える作業を行いました。
- 実施日と参加団体は、以下のとおりです。
どんぐりの鉢上げ体験実施日と参加団体、参加者数
8月25日 |
吉野東中学校、東菖蒲谷町内会、少年自然の家 |
|
12月15日 |
川上小学校 |
2年生1クラス26名 |
1月18日 |
吉野小学校 |
2年生6クラス185名 |
3月2日 |
大明丘小学校 |
2年生3クラス67名、3年生2クラス66名、計133名 |
鉢上げ体験(8月25日少年自然の家)
鉢上げ体験(12月15日川上小学校)
鉢上げ体験(1月18日吉野小学校)
鉢上げ体験(3月2日大明丘小学校)
環境フェスタかごしま2022への参加
- 当プロジェクトの取り組みを広く外部に発信する目的で、鹿児島市衛生組織連合会地球温暖化対策専門部会の出展するブースに参加させていただきました。寺山炭窯跡が2019年に被災して以降の、環境にかかわる取り組みを紹介しました。
- 当日は、来場者へのどんぐり苗の配布、植樹用のどんぐりの鉢上げも併せて実施しました。
環境フェスタかごしま2022ブース掲示パネル(PDF:3,276KB)
鉢上げの様子(近景)
鉢上げの様子(遠景)
植樹したどんぐりの生育状況
2023年
- 10月12日に撮影しました。写真は、周囲の雑草に紛れてしまい、すぐに判別するのが難しいくらいになっていました。1年の間で約1mにまで成長した苗もある一方で、大きく成長するまでに猪により食べられてしまった苗もありました。寺山に限らず、獣害の問題は最近、深刻になっていますね。
生育状況(2023年10月12日)
2024年
- 8月29日、台風10号が通過した後のパトロール時に撮影しました。昨年度よりさらに大きく伸長しています。この写真では大きさがよくわかりませんが、約2m近くになっています(今このページを執筆している担当の身長(170cm)より高くなっていました)。他の幼木も同じくらいに成長しており、現在は周囲の雑草に紛れてしまっていますが、今後雑草より大きくなると徐々に雑草が駆逐され、森としての景観が少しづつ形成されていきます。
生育状況(2024年8月29日)
真ん中あたりに直立しているのがどんぐりの幼木。周辺に倒れているのは雑草