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更新日:2021年10月11日

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2019年度の取り組み

  • 被災直後は、き損の拡大を防止するための応急措置を行うとともに、被災状況を記録するための測量や調査を行いました。
  • 土砂災害後は、現地へ立ち入ることすら困難な状況であったため、流入した土砂や樹木を撤去するなど復旧に向けた作業を安全に遂行するための環境整備を行いました。
  • また、環境整備の進捗にあわせて、炭窯のき損状況調査、構造把握調査、地質調査など、本格的な復旧を行うために必要な情報を収集するための調査も実施しました。
  • このほか、被災状況などについてユネスコ世界遺産センターへ報告書を提出しました。

被災直後の記録作成と応急措置

  • 6月28日に石積の崩落を確認した時にはまだ雨が降り続いていましたので、石積の裏側の土砂が雨で流出し、被害が拡大するおそれがありました。
  • そこで、すみやかに記録作成を行った後、崩落箇所周辺をブルーシートで覆いました。
  • 記録作成にあたっては、できるだけ早く、立体的に被災状況を記録するため、写真測量を行いました。
  • この時に設置したブルーシートのおかげで、後に発生した土砂くずれによる被害を最小限におさえることができました。

被災直後に収集したデータで作成した3Dモデル

被災直後に収集したデータで作成した3Dモデル

応急措置(ブルーシート設置)

応急措置(ブルーシート設置)

  • 7月1日の土砂崩れ発生後も大雨は降り続いたため、現地での作業は極めて困難な状況となり、7月9日になってようやく石積の崩落状況や土砂崩れ範囲の記録作成ができました。
  • また、さらなる崩壊を防ぐための応急措置も行いました。

7月9日に収集したデータで作成した3Dモデル

7月9日に収集したデータで作成した3Dモデル

土砂災害範囲

土砂災害範囲

応急措置(石積倒壊防止措置)

応急措置(石積倒壊防止措置)

応急措置(ブルーシート設置)

応急措置(ブルーシート設置)

流入土砂等の撤去(環境整備)

  • 土砂崩れの範囲を把握するための地形測量によって、被災範囲は約3,500平方メートル、流出土量は約1,500立方メートルと想定されました。
  • 炭窯は大量の土砂や樹木で覆われてしまっており、き損の状況を把握することが困難な状況であったため、これらを取り除く作業を行いました。
  • 遊歩道や、周辺斜面地などの土砂除去はバックホウで作業を行いましたが、炭窯を覆う土砂は基本的に人力で撤去しました。

遊歩道土砂除去の状況

遊歩道土砂除去の状況

炭窯土砂除去の状況

炭窯土砂除去の状況

作業終了状況(炭窯)

作業終了状況(炭窯)

作業終了状況(周辺斜面)

作業終了状況(周辺斜面)

き損状況調査

  • 炭窯を覆う土砂の大半を除去した後は、炭窯の石積がどれだけの被害を受けているのかを把握するき損状況調査を行いました。
  • 調査では崩壊のプロセスを解明するために崩落した石材全てに番号をつけ、その位置を記録しました。
  • この調査によって、地上に露出する石積の石材667個のうち139個が崩落したことがわかり、崩落はしなかったものの衝撃によって若干のずれが生じている部分があることもわかりました。
  • また、石材は劣化を防ぐために安全な場所に移動させるとともに、積み直しのための情報を収集するために調査票も作成しました。被災前に実施していた詳細な測量図と併せて検討した結果、崩落した石材ほぼすべてにおいて元にあった位置を特定することができました。

測量の状況

測量の状況

番付の状況

番号付けの状況

カルテ作成の状況

調査票の作成状況

構造把握調査

  • 炭窯の石積が壊れたことは大変残念なことでしたが、石積裏側の土(盛土)の情報を得ることのできる貴重な機会でもあることから、調査を実施することにしました。
  • 具体的には、土の表面を削って新鮮な地層を露出させ、その状況を観察・記録しました。
  • この調査によって、炭窯がどのように作られ、石積の「はらみ出し」がなぜ起こるのかを知る手がかりを得ることができました。
  • 被災前、炭窯は近世城郭の石垣に見られるような石積の背面に小さな石を詰め込む「裏込め」の技術が用いられていると考えられていました。
  • しかし、「裏込め」は確認できず、石材の設置と裏側の盛土を繰り返しながら構築されていることが分かりました。
  • また、盛土の「傾き」に注目すると炭窯の内側から外側に向かって傾斜していることが分かり、基盤の部分的な不同沈下も石積の「はらみ出し」の原因であったことが判明しました。

断面写真

断面写真

断面図

断面図

地質調査

  • 土砂崩れ発生のプロセスを想定するため、寺山炭窯跡周辺の斜面地においてボーリング調査や地下水位観測などを行いました。
  • その結果、崩壊した斜面地の背後の台地の地下には小規模な谷地形が存在し、火山が噴火した時の堆積物(火砕サージ堆積物)等の透水性のよい堆積層が存在することが判明しました。
  • そのような条件の下に、1日の降水量が約180ミリ(累積雨量700~800ミリ)もの降雨が誘因となり、斜面上方の地表面から浸透した雨水が斜面下方で噴出し、斜面崩壊が発生というプロセスが想定されました。

ボーリング調査状況

ボーリング調査状況

崩壊プロセス想定図

崩壊プロセス想定図

ユネスコ世界遺産センターへの被災状況報告

  • 2019年11月14日、「世界遺産条約履行のための作業指針(外部サイトへリンク)」第172項に従い、寺山炭窯跡の被災状況報告書をユネスコ世界遺産センターへ提出しました。
  • 提出文書(内閣官房ホームページ)(外部サイトへリンク)
  • 報告書の提出にあたっては、鹿児島市が事務局となる「専門家委員会」の指導・助言、「集成館地区管理保全協議会」の承認を受けるとともに、内閣官房が事務局となる「稼働資産を含む産業遺産に関する有識者会議」の指導・助言、「「明治日本の産業革命遺産」保全委員会」の承認を受けました。
  • この手続きは、日本国がユネスコ世界遺産センターに提出したガバナンス体制に基づいています。

「明治日本の産業革命遺産」のガバナンス体制

「明治日本の産業革命遺産」のガバナンス体制

  • 災害発生から報告書提出までの主な経過は以下のとおりです。

6月28日

炭窯正面右側の石積崩落、被災状況記録作成・応急措置(炭窯ブルーシート設置)

7月1日

土砂崩れ発生、炭窯正面左側の石積崩落・土砂埋没

7月5日

応急措置(斜面里道部ブルーシート設置)

7月9日

被災状況記録作成

7月16日

専門家(地質学)現地指導

7月19日

専門家(砂防学)現地指導

7月30日

「明治日本の産業革命遺産」保全委員会(事務局:内閣官房)

8月2日

専門家委員会(事務局:鹿児島市)現地指導

8月5日

文化庁現地指導、応急措置(石積倒壊防止措置・炭窯ブルーシート設置)

8月30日

環境省現地指導

9月5日

海外有識者(イコモス関係者)協議

9月6日

稼働資産を含む産業遺産に関する有識者会議(事務局:内閣官房)(外部サイトへリンク)

9月12日

集成館地区管理保全協議会(事務局:鹿児島市)

10月9日

専門家(地盤工学)現地指導

10月22日

専門家(文化財保存科学)現地指導

10月28日

「明治日本の産業革命遺産」保全委員会(事務局:内閣官房)

11月14日

ユネスコ世界遺産センターへ被災状況報告書提出

 

よくある質問

お問い合わせ

教育委員会事務局管理部文化財課

〒892-0816 鹿児島市山下町6-1

電話番号:099-227-1940

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