消費者契約法
最近の社会・経済情勢は、国際化や情報化、高齢化の進展によって急激に変化しています。これに伴い、消費者と事業者の間には情報量や交渉力の格差が広がり、契約に関するトラブルが年々増え続けています。
そこで、消費者契約に関する新しい民事ルールを作り、消費者の利益を守るためにこの法律が制定されました。これは、平成13年4月以降に消費者が事業者と締結した契約(=消費者契約)をすべて対象としています。(ただし「労働契約」は除く。)
消費者契約法について(外部サイトへリンク)
【取消し】不当な勧誘により締結させられた契約は、後から取り消すことができます。
- うそを言われた(不実告知)
重要事項について事実と異なることを告げた。
- 不利になることを言われなかった(不利益事実の不告知)
消費者の利益となる旨を告げながら、重要事項について不利益となる事実を故意に告げなかった。
- 必ず値上がりすると言われた等(断定的判断の提供)
将来における変動が不確実な事項について確実であると告げた。
- 通常の量を著しく超える物の購入を勧誘された(過料契約)
消費者にとっての通常の分量を著しく超えることを知りながら、消費者契約の勧誘をした。
- お願いしても帰ってくれない(不退去)
消費者が事業者に対し、退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず事業者が退去しなかった。
- 帰りたいのに帰してくれない(退去妨害)
消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず消費者を退去させなかった。
- 就職セミナー商法等(不安をあおる告知)
消費者が社会生活上の経験が乏しいことから(※1)、願望(※2)の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、不安をあおり、契約が必要と告げた。
※1消費者の年齢によって定まるものではなく、中高年であっても該当し得るものです。
※2進学、就職、結婚、生計、容姿や体型などの願望が挙げられます。
- デート商法等(好意の感情の不当な利用)
消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから(※1)勧誘者に好意の感情を抱き、かつ、勧誘者も同様の感情を抱いていると誤信していることを知りながら、契約しなければ関係が破綻すると告げた。
- 高齢者等が不安をあおられる(判断力の低下の不当な利用)
加齢や心身の故障により判断力が著しく低下していることから、現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、不安をあおり、契約が必要と告げた。
- 霊感商法等(霊感等による知見を用いた告知)
霊感等の特別な能力により、消費者にそのままでは重大な不利益が生ずることを示して不安をあおり、契約が必要と告げた。
- 契約前なのに強引に代金を請求される等(契約締結前に債務の内容を実施等)
・契約締結前に契約による義務の全部又は一部を実施し、実施前の現状の回復を著しく困難にした。
・契約締結前に、契約締結を目指した事業活動を実施し、これにより生じた損失の補償を請求する旨等を告げた。
【無効】消費者の利益を不当に害する契約条項は、無効となります。
- 事業者は責任を負わないとする条項
損害賠償責任の全部を免除する条項や、事業者の故意又は重過失による場合に損害賠償責任の一部を免除する条項は無効。
- 消費者はどんな理由でもキャンセルできないとする条項
消費者の解除権を放棄させる条項は無効
- 成年後見制度を利用すると契約が解除されてしまう条項
事業者に対し、消費者が後見開始等の審判を受けたことのみを理由とする解除権を付与する条項は、無効となります。
- 平均的な損害の額を超えるキャンセル料条項
キャンセル料のうち、契約の解除に伴う平均的な損害額を超える部分や、遅延損害金につき年利14.6%を超える部分についての条項は無効。
- 消費者の利益を一方的に害する条項
任意規定の適用による場合と比べ消費者の権利を制限し又は義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効。
クーリング・オフとの違い
クーリング・オフ
特定商取引法などで契約した場合、一定期間内(訪問販売、電話勧誘販売等では8日間、マルチ商法、内職モニター商法では20日間)であれば無条件で解約できる制度です。
消費者契約法
消費者が事実と異なることを知ったとき、不退去・退居妨害の状態がやんだときから、1年間は取り消しができます。ただし、当該消費者契約をしてから、5年間を過ぎると、取り消すことができません。(霊感等による告知を用いた勧誘に対する取消権については、被害に気付いてから3年間、契約締結時から10年間行使できます。)また、不当な契約条項は、その部分のみ無効になります。取り消し・無効になった場合、消費者・事業者双方で元に戻す(原状回復)義務があります。