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更新日:2020年12月18日
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鹿児島市景観まちづくり賞は、市民や事業者の皆様とともに、鹿児島の良好な景観を創り、守り、育てていき、地域性豊かで風格があり、市民誰もが愛着と誇りを持てる美しい鹿児島のまちづくりを進めていきたいという願いを込めて、実施しているものです。
この賞は良好な景観形成に寄与する民間建築物を対象とした「建築部門」と、良好な景観形成に市民の方などが寄与したまちなみ・田園・海岸・緑地などの景観や、景観まちづくりに関する住民活動を対象とした「景観部門」で構成されます。
第4回となる今回は、平成28年6月20日から8月5日まで募集を行い、応募のありました建築部門30件、景観部門2件の中から、厳正な審査を経て、下記の建築部門3件、景観部門2件を決定しました。
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名称 |
内容 |
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建築部門 |
物販店舗 |
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一戸建ての住宅 |
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病院 |
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景観部門 |
上町地区の歴史・文化的遺産の保存・活用等 |
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国道225坂之上交差点花壇の維持・管理 |
参考:第4回鹿児島市景観まちづくり賞パンフレット(PDF:9,452KB)
(プレミアム館は左側建物)
JR鹿児島中央駅東口駅前広場側の大階段を撤去し、商業施設「アミュプラザ鹿児島」の増床工事として建設された別館「プレミアム館」であり、駅に直結する地上8階建ての建物である。
建物形状については、周辺建物との調和に配慮するとともに、店舗面積を最大限有効に活用するために矩形としている。外壁素材については、3階以上は、薩摩焼、黒薩摩のつやのある表面を想起させる素材として花崗岩を採用し、降灰の影響を考え、凹凸を避けメンテナンスのしやすい滑らかな仕上げとしているが、1・2階は赤レンガを用いている。
内装は、大人の落ち着いた雰囲気を醸し出す白を基調として、エスカレーター側面の壁は光壁とし、薩摩切子をイメージしたデザインを施している。有名ブランドの店舗が集まり、7階東側の店内には九州新幹線のホームを見下ろせる憩いの場を設けている。
外観にはインパクトの強い色彩が使われている。3階以上の「黒」と1・2階のアースカラーの「赤」がそれである。「黒」を選んだ理由は、鹿児島には“黒豚、黒酢、黒焼酎”などの農産物や“黒千代、黒切子”の生産品のように、「黒」に代表される文化が根付いていること、周辺には「黒」をアクセントとした建物が多いこと、旧東口駅舎入口も「黒」であったことなどであり、「赤」を選んだ理由は、桜島の桜や噴火・切子の色であること、本館に利用されていることなどである。
とはいえ、大きな壁面が「黒」、目につきやすい部分が「赤」で構成されているファサードは特異なもので、市民の間で議論が巻き起こったことは想像に難くない。このことは審査委員会でも同様で、特に「黒」について議論が分かれたことは記しておきたい。けれども、現地に立ってみると、光沢のある黒い壁面は見る角度によって空や周辺の建物を映し出し、「赤」は本館の色彩と響き合い、想像以上に周辺の街並みに溶け込んでいることに、驚きを覚えたことも事実である。
建築を単体として眺めるのではなく、街並みの構成要素として眺めるとき、鹿児島中央駅周辺における一体的なまちづくりに貢献する可能性が見えてくるのではないかと考える。この作品を通して、優れた都市景観とは何かについての活発な対話が生じることを期待している。
桜ヶ丘01・02は、鹿児島市郊外の区画整理によって作られたニュータウンである「桜ヶ丘ビュータウン」にある2軒の戸建て住宅である。これらは「暮らしをたのしむ、快適に暮らす、未来をえがく」ことを目指す住宅システムのモデルハウスである。このプロトタイプには、家族がつながる、自然とつながる、さらに住宅がつながることを可能にする様々な工夫が凝らされている。
住む人のライフスタイルや将来の家族構成に合わせて、使い方や間取り、設備、内装を自由にアレンジできるように、中心の柱と周囲の外壁で基本となる構造体を構成し、内部には柱が少ないスケルトンインフィル工法を採用したシンプルな木の箱としてデザインされている。木材の質の高さやディテールの完成度も相俟って、ロングライフの住宅が実現されている。
夏は蒸し暑く、冬は寒さが厳しい鹿児島で快適に暮らせるように、高気密・高断熱・高遮熱の「高性能住宅」に、自然の光や風を取り入れた「パッシブデザイン」を融合している。冬は太陽熱を利用した床暖房、夏は風の流れで涼しい室内環境をつくるOMソーラーシステムを採用している。夏の陽射しはできるだけ遮蔽し、風の通り道を確保し、植栽によってデッキに涼やかな木陰をつくるとともに、冬は陽光を十分に取り込み、陽だまりを室内へと導き入れている。
鹿児島での生育に適した高木落葉樹と在来の常緑中低木を配し、足元には山野草を植えた四季折々の彩りのある庭、そこにテラスやデッキを設け、自然とつながる暮らしが提案されている。これは鹿児島の原風景の再生を目指す試みでもあり、住み手による継続的な庭育ての努力に期待したい。
同じ住宅システムのバリエーションである2軒の住宅が、隣接する敷地に微妙な角度をつけて配置されており、庭が連坦した広がりのある緑地や隣家が見通せる前庭の情景が生み出され、魅力的な街並みの景観が形成されていることも特筆に値する点である。
鹿児島市の中心より5km南下した住宅地の小高い丘の上にある三州脇田丘病院は、この地に開院して以来、周辺住民や鹿児島大学病院と連携して多くの患者の心のケアを行ってきたが、それを踏まえて現地での建て替えを行った精神科病院である。
丘という平面的に限られた敷地に加え、用途地域が第一種低層住居専用地域に変更されたことに伴う高さ制限など、多くの制約があったが、周辺住民の今後のケアを考え、建て替えが最良と判断し、平面的な制約、高さの制約、降灰対策、ローリング工事(敷地にゆとりがない場合、部分的に解体→建設→移転を繰り返して工事を進める技術)などについて、技術者、病院スタッフ、周辺住民などの力を結集して、魅力的な病院を実現したものである。完成した病院は2つの異なる角度のボリュームで構成されているが、その角度は旧病院の角度と同一となっており、建物の形状においても、旧病院の記憶を引き継いでいる。また、旧病院の屋根の「橙色」を内部サインに使用している。
近年、ストレス社会が蔓延し、精神科を受診する人々が増え、医療の進歩で入院期間も短期化してきていることから、気楽に心のケアができる身近な病院が求められている。そこで、病院が住民の心の支えとなるような安心感を与え、周辺の住宅や緑ともなじむように、様々な工夫を凝らしている。白薩摩の「白」をイメージさせる外壁、長大な壁面の分節、楽しい雰囲気を演出するリズムのある縦スリット窓、開放的なカーテンウォールなどがそれである。技術的には、外壁を構造体として活用できる新しい構造形式を採用し、開口部の位置を自由に設定できる平面計画を可能としている。
周辺住民とのつながりを重視し、現地での建て替えを推進するために、意匠・構造・設備・施工などの技術を総合して多くの制約を乗り超え、周辺の環境やコミュニティとの関係に配慮し、親しみやすい景観を実現していることは高く評価できる。
JR鹿児島駅を中心に広がる鹿児島発祥の地であり、城下町としての佇まいを残す上町(かんまち)地区の歴史的資源を生かし、いつまでもこの上町で暮らし続けたい、と思えるまちづくり活動とそれを担う組織である。コミュニティの機能が低下し、地域における連帯意識が希薄化しつつあるという課題に対して、上町の魅力を住民自らが発信することを通して、人の絆を取り戻すことを目指している。
この組織は平成20年に既存の町内会の事業部としてスタートし、複数の町内会や通り会などに参加を呼び掛けて結成された。既存のコミュニティの域を越え、様々な団体(NPOや商店街)が連携することで、失われた行事や活動を実施しているが、直接の契機は平成20年度の鹿児島市「市民とつくる協働のまち事業」に採択され、公共性のある地域サービスを目指して活動を開始したことである。
上町地区には、NHK大河ドラマ「篤姫」で注目された天璋院篤姫の生家である「今和泉島津家」の本邸跡や中世の守護であった島津家の内城跡がある南洲門前通りなど、当時の雰囲気を感じることができる石塀や寺社等が残っている。しかし、幕末期から昭和にかけて戦火の被害を多く受け、上町の魅力を知る機会が少なくなってしまったことから、その魅力を再確認すべく「いにしえプロジェクト」「きずなプロジェクト」などの5つのプロジェクトを立案し、できることから順次実施している。その中で、「上町探訪」「上町検定」「井戸端サロン」「かんまち本(その1)」の刊行などを行ってきた。
プロジェクトの最大の特徴は、フットワークの軽さである。まちづくりに興味や関心がある人は誰でも参加できる組織であり、メンバーは得意分野で力を出し合い、仕事や家庭の事情など都合が悪いときは相互にフォローし合いながら活動に参加している。メンバーには若い人も多く、既存の自治会の枠を超えて、まちづくり活動を活発に展開している点は注目に値する。
国道225号の坂之上交差点が新しく設置されて、「坂之上の表玄関」として明るくなったが、その場所で、笠松・星和台、坂之上駅前、坂之上東中、坂之上東前という4つの町内会の有志一同が平成26年10月頃から地域のボランティア活動として進めている花壇づくりである。見る人の心が安らぐように、住民が協力して心を込めて手入れをし、美しい花壇の維持に努めている。
〈笠松・星和台町内会の花壇〉は、86歳の長老が種から育てたマリーゴールドが咲く花壇、〈坂之上駅前の花壇〉は、バナナの木、ブーゲンビリア、さるすべりなど、自宅の庭木がそっくり移植された花壇、〈坂之上東中町内会の花壇〉は各家庭の木々を寄附していただいた花壇である。〈坂之上東前町内会の花壇〉ではイヌマキの下に、ポーチュラカ、メランポジュームなどが賑やかに色を添えている。
国交省指宿国道事務所と連携し、約140平方メートルのシラスを黒土に代え、4つに区分けし、さらに夏の日照りの時は、ボトルで水かけを行い、樹木や草花を枯らさないよう努力している。鹿児島市からは花苗の提供協力を得ているというが、水道の設置が切望されるところである。
一人の投げかけたしずくが大きな波動となって住民の心を動かし、地域の活動へと発展したものである。町内会有志一同による地域のボランティアの活動の意識を高め、四季を通じて花の絶えない維持管理を行っている。この花壇のおかげで、校区の異なる地域(錦江台校区、和田校区)の人々との交流が始まっており、その効果は少しずつ広がりつつある。
この花壇づくりは、平成27年度の鹿児島市の「まちかどフラワーコンテスト」において最高賞の特選に選ばれているが、花と緑にあふれるまちづくりを先導する活動として、さらなる発展を期待したい。複数の町内会の連携のあり方、行政や専門家による支援のあり方なども含め、地域住民による花壇づくりを次の世代へと繋いでいくことが今後の課題といえる。
募集期間
平成28年6月20日~8月5日
募集対象
建築部門
市内にあり、美しい街並みと豊かな都市環境に寄与し、街に潤いと魅力を与えている民間建築物で、平成18年4月1日から平成28年8月5日までに建築基準法による検査済証の交付を受けたもの
景観部門
応募件数
建築部門:30件
景観部門:2件
審査会
期間
平成28年10月28日~30日
委員長 |
門内輝行 |
大阪芸術大学芸術学部建築学科教授 京都大学名誉教授 |
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副委員長 |
井上佳朗 |
鹿児島大学産学官連携推進センター特任教授 鹿児島大学名誉教授 |
委員 |
木方十根 |
鹿児島大学大学院理工学研究科教授 |
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橋本文雄 |
鹿児島大学農学部教授 |
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古川惠子 |
鹿児島女子短期大学名誉教授 |
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江良きよ子 |
era色彩計画代表 |
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東川美和 |
NPO法人まちづくり地域フォーラム・かごしま探検の会事務局長 |
部門 |
表彰者区分 |
贈呈品 |
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建築 |
所有者 |
賞状及び銘板 |
設計者 |
賞状 |
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施工者 |
賞状 |
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景観 |
活動団体等 |
賞状及び賞金10万円 |
よくある質問
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